麻の歴史

Brief History of Hemp

日本における麻の歴史は、縄文時代にまでさかのぼります。
最近の研究によると、縄文時代にはすでに麻(大麻)が繊維植物として栽培されていたことがわかっています。
縄文後期(約3700年前)の下宅部遺跡(現在の東京都東村山市)では、藍、栗、漆とともに麻が栽培されていた痕跡が発見されています。

Brief History of Hemp

奈良・平安時代に編まれた『万葉集』には、衣服に麻が用いられていたことを示す歌が30首以上残されており、当時の生活に麻が深く根付いていたことがわかります。

また、古代の神々が麻の衣服をまとっていたとも伝えられています。 その名残として、現在でも神社の神官や巫女の衣装には麻(大麻)が使われています。 さらに、神社の注連縄やお札もすべて麻で作られており、魔を祓う力があるとされています。 日常生活でも麻は幅広く活用されてきました。 相撲の横綱が締める化粧まわし、下駄の鼻緒、凧揚げに使う糸なども、麻の強さを生かして作られてきたものです。

Brief History of Hemp

麻にはさまざまな種類があります。日本ではヘンプ(大麻)、中国ではラミー(苧麻)、エジプトやヨーロッパではリネン(亜麻)が古くから利用されてきました。 日本にリネンが入ってきたのは、明治時代以降といわれています。

Brief History of Hemp

世界におけるリネンの歴史も非常に古く、人類最古の繊維とされています。
紀元前8000年頃、チグリス・ユーフラテス川流域で文明とともに始まったと伝えられています。
古代エジプトでは、リネン製のカラシリス(巻衣)が「神に許された」衣服とされ、神官の衣装や神事に用いられただけでなく、一般の衣服にも広く使われました。
さらに、ピラミッドから出土したミイラを包む布もリネンで作られていました。



日本と古代エジプトの双方で、神事に麻が用いられてきたという共通点は非常に興味深いものです。 それは、麻に「魔を祓う力」があると信じられていたことを示しています。
また、麻の歴史がさらに古いとする説も出ています。 2009年9月に米国の科学誌『サイエンス』に掲載された研究によれば、グルジアの洞窟から約3万2000~2万6000年前のものと推定されるリネン糸(亜麻糸)の断片が発見されました。 これはグルジア国立博物館とハーバード大学などの国際研究チームによる発表です。(出典:日本経済新聞 2009年9月23日)

太平洋戦争以前の日本でも、麻(大麻)は薬や紙、そして衣料用の糸として広く利用されていました。 ところが戦後、日本を占領したGHQによって大麻の使用は禁止されました。 それ以降、麻を使う文化は一部の愛好者を除いて失われ、現在に至っています。

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